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2007年12月22日 (土)

銅鐸の原料-古代の銅インゴット

Photo_12

青銅器の原料となる古代の銅インゴットがどういうものかご存じだろうか?

写真1は、キプロス島の牛皮型インゴット
写真2は、中国・銅緑山の円盤状インゴット(銅錠)S_2
これらは結構大きいもので、キプロスのが10~50kg、中国のものは5~15kg/1個ある。中国の長安城遺跡の銅錠(長方形)の成分は99%銅だそうだ。
写真3は、岡山県の高塚遺跡で出土した棒状銅製品(長さ134cm,94.4g)弥生後期のもので、ずばり中国から輸入された青銅製品の原料とみられている。成分は銅93.5%、鉛5.5%(錫は0.05)で、鉛同位体比は弥生後期の領域A-a領域と一致。馬淵さんらは中国製銅インゴット(大)が小さなスラブ・ビレット状にされて、日本国内で流通していたのではないかと推定されている。※馬淵久夫2007「鉛同位体比による青銅器研究の30年」『考古学と自然科学』55号(日本文化財科学会)

Photo_13久田谷のバラバラ銅鐸も5cm角ぐらいに几帳面に割られていることから、ちょうど棒状銅製品と似たような重量になりそう。銅鐸破壊→再溶解→再インゴット化ではなく、弥生後期銅鐸は銅%が高いから、小さくカットするだけで小インゴット化(スラブ・ビレット化)できる。

Photo_14馬淵さんらは銅はインゴットで輸入されたとするが、後期銅鐸は錫の%が低い。実は錫は日本国内ではほとんど採れない。中国には古代から錫鉱山があるし、現在でも中国の錫生産量は世界一(二位:マレーシア、三位:ボリビア)。雲南や広西など南方に鉱山があるようだ。吉野ヶ里遺跡の青銅器工房?で純度の高い錫塊(写真4)が出土しているから、弥生時代に錫が中国から輸入されていたのは間違いないだろう。しかし貴重品だったので国内での流通量は僅少だったのでは?ないだろうか。ただし、有名な平原のボウ製大型鏡(46.5cm)にはしっかり錫が27%も入っているから、伊都国人は豊富に持っていたのかもしれない?

銅鐸など弥生時代の青銅器に使われた銅の量は、銅鐸出土数(1995年)約450個→約3tと推定されており、日本の弥生時代の全ての青銅器に使用された総量でも30~100tに満たないとみられている。(※久野邦雄1999『青銅器の考古学』学生社 p.60, 神崎勝2006『冶金考古学概説』雄山閣 p.33, 「我が国の銅の需給状況の歴史と変遷(歴史シリーズ-銅(2)-」金属資源開発調査企画グループ)難波さんも銅鐸の製作総数を計算されているが、最大で見積もって4400個 出土数の約10倍と推定されている。(※難波洋三2000「同笵銅鐸の展開」『シルクロード学研究叢書』3(シルクロード学研究センター)/京博HP銅鐸は何個作られたか)後期銅鐸は出土総数の約31%だが、後期銅鐸の方が大きいので、原材料としては量的に半分ぐらいになるかもしれないが、いずれにしても三桁は越えない。

日本の銅鉱山開発は7-8世紀~定説だが、東大寺大仏の銅380t、梵鐘など他の大型青銅製品も含めると、東大寺造営だけでも約500tの銅が必要とされており、大仏だけで弥生時代全期間の青銅器の必要量を越えてしまう。

弥生青銅器に自然銅などを使ったとされる「国内調達説」は久野雄一郎さんの説だが、久野さんは年間平均使用量は10kg程度と推定し、この程度の青銅原料であれば外国から輸入しなくても国内で十分賄うことができたとする。(※久野雄一郎1997「銅鐸科学考」『銅鐸の谷-加茂岩倉遺跡と出雲』アサヒグラフ別冊)しかし私は理屈としては“逆さま”だと思う。

中国湖北省の銅緑山は春秋~前漢末まで操業した古代中国最大の銅鉱山だが、この鉱山だけで生産された銅は堆積した銅滓量から8~10万tとみられている。(※山田勝芳2000『貨幣の中国古代史』朝日選書)p.150 1日生産量が300kgを下らないということなので(※稲畑耕一郎2007『図説中国文明史-春秋戦国・争覇する文明』創元社 p.120)銅緑山の1日稼働分で弥生青銅器30年分が調達できる計算となる。全く圧倒的にケタ違いの生産量・流通量なのだ。

この程度の青銅原料であれば外国から“買ってきた方が早い”というのが「経済の論理」として正しいと思う。逆に後期銅鐸全部インゴットに鋳直してもどのくらいの量になるか…?そんなものを中国人が買うとは思えない。

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