銅鐸内の気泡-土製と石製の鋳型の違いを裏付け
外縁付鈕式の銅鐸は石製鋳型で作られ、扁平鈕式銅鐸以降(正確には扁平鈕式の新段階~)、土製鋳型に変わったと言われてきたが、銅鐸をX線写真で分析することで、その合金内の気泡の量が石製から土製で減少することがわかったという。
見えた 技術進歩 - 合金の気泡減少【橿考研博物館】 (2009/11/22 奈良新聞)
気泡が多い石製鋳型で造られた「外縁付鈕式」の銅鐸の透視写真(県立橿原考古学研究所付属博物館提供)
弥生時代を象徴する青銅器、銅鐸(どうたく)の研究の一環で、県立橿原考古学研究所付属博物館(橿原市畝傍町)はこのほど、銅鐸8点のX線撮影を実施。制作年代が新しくなるほど合金に気泡がなくなり、均質な製品ができていく技術の向上を検証した。
会期中の特別展「銅鐸」(―23日)で展示している様式や大きさの異なる銅鐸8点(いずれも辰馬考古資料館蔵)を撮影した。
銅鐸は、鋳型に合金を流し込んで造った。鋳型は、年代とともに石製から土製へ変化。鋳型の変化に伴い、外見上でも文様が鮮明になるなど精度が上がることが指摘されていた。
X線撮影の結果、弥生時代前期(約2300年前)の「外縁付鈕式」の銅鐸は気泡がとても多く、弥生時代中期後半とされる「扁平鈕式」の銅鐸にはほとんど気泡はみられなかった。同研究所付属博物館の北井利幸主任技師は「土製と石製の鋳型で造られた銅鐸の違いを裏付けることができた」としている。
12月13日まで、X線撮影の写真パネルを同博物館で展示する。今月23日までは、実物と比較して見ることができる。
午前9時から午後5時まで。特別展会期中の入館料は大人800円、高・大学生450円、小・中学生300円。問い合わせは同博物館、電話0744(24)1185。
写真:気泡が多い石製鋳型で造られた「外縁付鈕式」の銅鐸の透視写真(県立橿原考古学研究所付属博物館提供)
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コメント
向井一雄様
銅鐸通信を読ませて戴き勉強させてもらっています。
有難うございます。
この中で、銅鐸の中の気泡に付いて、すこしコメントしてみます。
非鉄系(銅、アルミ)は、内部にガスホールが出やすい。
その理由は、鋳型の乾燥度、通気性などの問題も有りますが、銅は、溶解時に空気中の酸素、水素、そして水分などにより、材料が酸化したり、ガス吸収したりして、鋳込み後の凝固時に、そのガスが放出するという現象があります。
従って、現代は、溶解時にシールガス(アルゴンガス)を使い(吹き込むとか)、溶湯中の酸化を防ぎながら鋳込みします。
しかし、それでも、この問題は、なかなかクリアできないものです。それは、湯道系の中を溶湯が流れる時に、再度空気と乱流して酸化する問題が残ります。
近年では、鋳込みを装置の中をアルゴンガスで充満させて行う方法もとられます。自然大気鋳造の場合は、湯道系の設計が気泡の低減に繋がります。砂型の場合は、格段に通気性が良くなりますが、金属の凝固時のガス放出は避けにくいものです。
湯道系の残材を使っての再度の溶解は、入念に材料の乾燥が必要となります。それでも、内部の気泡(ガス)は出ます。
ブログの中のX線写真の気泡は、凝固時に放出されたガスのように見えます。鋳型からの場合は、鋳込みの上部方向へ浮くとか、逃げ道に集まり易く、凝固時の場合は、どこにでも出る…傾向になるようです。
追伸
1:鉄系の日本刀の場合は、砂鉄の成分が解ると、その産地の特定に繋がり、そして、それらの周辺のものより、年代測定に繋がります。例えば、山陰はチタンが低い、山陽側はチタンが多い、韓国もチタンが高い場合が多い・・・ようです(概ね)。
地域の銅鉱石の成分が、これに繋がります。
2:このブログの背景の色が真っ赤で、その中の黒字がすごく読み難いです。
最後に、
私は、島根県安来市の庄司利彦と申します。
環境のコンサルと産業の支援を心がけているものです。
以上
投稿: 庄司利彦 | 2014年8月18日 (月) 19時35分
庄司利彦様
向井です。
貴重なご教示いただきありがとうございます。
返信がたいへん遅くなってしまい、申し訳ありません。
>凝固時に放出されたガスのように見えます。鋳型からの場合は、鋳込みの上部方向へ浮くとか、逃げ道に集まり易く、凝固時の場合は、どこにでも出る…傾向
>
これまでも鋳型材質の違いによってガス抜けの状況が異なり、石製の場合、銅鐸の鈕と舞の接続部に凹みが生じるとされてきました。石製の方が鋳造欠陥も多いことはご存じの通りです。銅鐸は裾から鋳込みますので、ガスは裾方向に上昇するのでしょうが、銅鐸の形状が複雑な箇所でガスが溜まるということになるでしょうか?
>背景の色が真っ赤で、その中の黒字がすごく読み難い
>
申し訳ありません。色使いの改善検討致します。
投稿: 向井 | 2014年11月 7日 (金) 09時16分